tsuzumi
往年の名コンビ、桜川末子・松鶴屋千代八の漫才のCDに、
「めでためでたの若松様よ枝も栄えて葉も茂る」と唄いながら始まるものがあります。
初めて聴いた高校生の当時は、この詞章が何なのかわからなかったのですが、これはどうやら花笠音頭の一節だそうです。ではこの若松様とは何なのか、と申しますとこれは諸説あるようで、例えば花笠音頭の指すのは若松観音というのが定説です。しかし他にも会津若松の若松であるとか、伊勢音頭の原点の木遣り歌に出てくる蓬莱台であるとか、色々です。
しかし今回は若松様が何か、という事はひとまず置いて、全国各地のおめでたい民謡に注目したいと思います。
上記の詞章は花笠音頭だけでなく、全国の民謡で使われており、中でも「祝い唄・祝儀唄」というジャンルのものに用いられています。そしてこのジャンルは、数えだすと何千、何万と種類があるそうです。
このジャンルだけでも細分化すると、
神仏に関するもの(神迎唄など)、年中行事に附随した唄(鳥追い唄など)、一家の慶祝(出産祝い唄など)、職業種による祝い唄(農業、林業、漁業、鉱業、土木建築)
という具合にいくらでも出てくるので、何万というのは大げさだとしても、何千というのは現実味のある数字のような気もします。
年中行事に附随したものは他に、春駒、春田打ち、大黒舞、てんぽ舞い、鳥刺し舞い、射的唄、左義長唄、盆唄、盆綱、引き唄、虫送り唄、七夕唄、眠り流し、亥の子唄などが含まれ、放浪芸フリークにとって魅力的な文言が並んでおります(笑)

さて、ではなぜそんなにおめでたい民謡が多いのか、という事ですが、前回お話しした予祝という考え方が根付いているから、というのも1つの理由でしょう。しかし民謡の成立は予祝の芸能の成立よりもはるかに下りますので、それ以外の様々な要因もあるわけです。その1つが、宴会の座びらきにまず祝い唄をうたわねばならないしきたりであると考えられます。(ここで言うひらきは、開始の意です)
例えば東北の婚礼の席などでは、まず全員が正座して手を打ちながら「さんさ時雨」という民謡を唱和するそうです。また東京でも80年位前までは、祝宴の最初に「はつうせ」や「五反田」といった祝い唄をうたったそうです。この他鹿児島・奄美大島など、例を挙げれば枚挙に暇がありません。
こういったしきたりから、それぞれの祝い事に合わせた、各地の祝い唄が出来上がり、それが今も脈々と受け継がれているのだと思われます。

今回は放浪芸の隣接分野の民謡のお話になりましたが、予祝・祝福というキーワードでしっかりと繋がっているところが面白いですね。やはりこの考え方は、日本における芸能の原点と言えるものなのかも知れません。